たばこ産業のどす黒いマーケティングを知る!~【悪魔のマーケティング】書評

【悪魔のマーケティング】

『タバコなんざ、ガキや貧乏人に黒人、あとは馬鹿に吸わせておけ‐米国大手たばこ会社役員の発言』

こんにちは、現在禁煙10日目の哲也です。

 

前々からタバコを辞めようとは思っていたのですが、何度か禁煙に挑戦するも挫折してしまっていました。(禁煙最長1か月)

しかし、今年中に職場が完全禁煙になるということで、この際禁煙に再挑戦しようと思い、今回禁煙に挑戦しているのですが…

 

禁煙外来に通うことも考えたのですが、保険適用になる基準とか良く分からないし、薬の副作用で吐き気とかするらしいし、気合で乗り切ることを決意。

少しずつマシになっているとはいえ、タバコを吸いたい衝動をどうにかできないものかと悩んでいました。

 

そこで、先日Amazonで本を探していたら、今回読んだ『悪魔のマーケティング』に出会いました。

 

本書は、タバコ産業がいかにどす黒い経営をしてきたのか、その歴史やタバコ会社に勤めていた研究者などの証言をもとに、解説してくれます。

これを見て、禁煙の意思を強めることと、ビジネス的な学びを得られれば、まさに一石二鳥と思って購入。

 

そして、昨日やっと届き、先ほど読み終えましたので、本書からビジネス的な視点で学べたことを書いていきたいと思います。

(禁煙に役立つか、という事については最後に書きたいと思います。)

消費者の不安や罪悪感を減らす

今では、タバコを吸うことが健康に悪いと誰もが知っています。

また、まだ喫煙している人も体にいい影響を及ぼさないことは、誰もが自覚しています。

 

今から100年ほど前も、タバコを嗜む消費者は、『喫煙が健康に悪影響を及ぼす』という事に対して漠然とした不安や、吸う事への罪悪感を感じていました。

 

ですが、これはタバコ産業からすれば一大事。

なぜなら、タバコに対してのマイナスイメージが広まれば、その分彼らの利益が減ることは分かり切っていたからです。

 

そして今日まで、たばこ産業はタバコを購入する消費者の健康的な不安、そして罪悪感を減らすにはどうすればいいのか考えて、色々な施策を実行してきました。

 

その方法の一つは広告であり、消費者に対して、いかにタバコが健康に悪影響を及ぼさないのかを、繰り返し伝えることで、その不安を減らそうとします。

 

例えば、低タール、低ニコチンのタバコの登場です。

 

それまで、両切りのフィルターのついていないタバコが主流であったので、タバコにフィルターを付けて、タバコから発生する有害物質はすべてブロックできる、さらには、『このタバコは健康にいい』というような宣伝をするわけです。

 

そうすることで、消費者はフィルター付きのタバコや、低タール、低ニコチンのタバコを、健康的なものと好んで買うようになります。

 

実際には、そうではないにもかかわらず、です。

 

こうした消費者の不安や罪悪感を減らすのは、どんなビジネスでも共通することです。

 

例えば、高い商品を購入するか悩んでいる人は、その消費に対して、『こんな高いものを買って大丈夫だろうか』と不安に思ったり、罪悪感を感じてしまいます。

 

そこで、販売者側は『自分へのご褒美にぜひ』と、購入者の罪悪感を減らし、さらにそのアフターサービスを充実させることで、購入したことへの不安や後悔を感じさせないようにする必要がある。

 

それを悪用した形が、今回のタバコ産業の方法であるわけですね。

依存性は、”熱狂的な”リピーターを生み出す

麻薬やたばこ、パチンコといった商品は、快楽が強いから儲かるのではなく、その依存性があるからこそ、莫大な利益を手にすることが可能です。

タバコなど、中毒性を持つ商品を持つ会社は、他の商品では得られない”熱狂的な”リピーターを手に入れることが出来るから。

 

タバコに含まれているニコチンには、強力な依存性があることは、一昔前とは異なり、昨今の常識では当たり前の事だと思います。

 

タバコ産業は、このニコチンの依存性を、それが世間に明るみに出る前から気づいていた。

そのうえで、それを利用した販売を行っていました。

 

どういうことかというと、従来のタバコにもニコチンは含まれてはいるのですが、それをより効率よく人体に吸収できるようにする物質が発見されました。

その物質とは、アンモニアの事です。

 

タバコにアンモニアを混ぜることで、ニコチンの吸収速度や効率を劇的に高め、より依存しやすい商品へと変貌していきました。

このことは、喫煙経験のある僕も認識があって、これを教えてもらったのは、とあるタバコ屋でのことでした。

 

そのタバコ屋で、安くタバコを吸うことが出来るという理由で、手巻きタバコというものを購入していました。

手巻きタバコとは、タバコの葉、フィルター、紙など、それぞれを自分の好みに合わせて選ぶことが出来て、オリジナルのタバコが作れて、なおかつ市販のパッケージのタバコに比べると半分程度の費用で済みます。作るのは面倒ですが。

 

それで、その手巻きタバコが普通のタバコと異なるのは、値段だけはありませんでした。

 

異なる点は2点あり、一つはタバコのにおいが付きにくいこと。

普通のタバコから手巻きタバコに変えただけで、周囲の人から『あれ?タバコ辞めた?』と聞かれるくらいには、タバコ独特のにおいが付きませんでした。

この理由は、市販のタバコに含まれているアンモニアが、手巻きタバコには含まれていないからです。

 

もう一つは、燃焼スピードが異なること。手巻きタバコは自分で吸い込まなければ勝手に燃えるスピードがかなり遅いです。というより、吸い込まなければ、タバコにつけた火が消えてしまうくらいでした。

これが普通のタバコなら、放置すればほとんど灰になってしまいます。なぜなら普通、ほとんどのタバコには、燃焼材といわれるものが含まれているから。

 

このアンモニア、燃焼材などの成分が、タバコの依存性の原因であるニコチンの吸収を加速させる。

その結果、喫煙者はタバコを止めることができず、ずるずるとタバコを買い続けるようになるわけです。

消費者の行動、心理を徹底的に研究していた

タバコ産業が最も顧客に取り組みたい層、それは”十代の若者”であり、未成年の喫煙者を増やしたいと考えていました。

 

その理由は、タバコを吸い始めるのは十代の時期が多く、20台を超えると、それからタバコを吸い始める人が激減していきます。

また、十代でタバコを吸い始めた層が、その後お気に入りの銘柄のタバコを買い続け、タバコ産業に長く貢献してくれるからです。

 

どういうことか?

 

喫煙経験のある方は理解できるかもしれませんが、喫煙者の多くは、基本的に一つの銘柄のタバコを買い続けます。

なぜかというと、それが一番吸いなれていて、自分に一番合うタバコだと分かっているから。

 

つまりリピート率が滅茶苦茶高い顧客に育つという事。

 

そして、タバコを吸い始める理由について。

ほとんどの人は、タバコを吸い始めるのに、『タバコがおいしいから』という理由では吸い始めません。

どちらかというと、最初のうちは苦いとか、煙たいとか、不味いと思いながら吸い続けます。

 

決して美味しいとは思わないのに、タバコを吸うのは、タバコを吸う行為が”大人の世界への入り口”という認識があるからです。

つまり、タバコを吸う行為を、『かっこいい』とか『大人っぽい』と思うんです。

 

なぜそのような感情になるかというと、タバコ産業のマス・マーケティングの効果だったり、映画やマンガの影響であったりします。

 

今ではほとんど見かけることはありませんが、タバコの広告って、大人のカッコよさを表現しているものが多かったです。

映画やマンガでタバコの表現が出てくる時も同様です。

それを見た子供が、タバコ=大人=カッコいい、というイメージができ、タバコに憧れるようになる。

 

十代の少年たちが、タバコの消費者として重要な顧客になると発見したタバコ産業は、この少年たちに、いかにしてタバコを吸わせることが出来るかを徹底的に研究した。

少年たちが何を感じているのかという心理、どういう行動を好むのかということ、これらを把握し、一番効果的な広告を考え出した。

 

その広告の方法とは、子供に人気のテレビ番組でタバコのCMを大量に流すことであったり、子供に好かれるようなデザインの商品を売ったり。

また、先ほど記載したような、『カッコいい大人』というイメージをタバコに持つように、広告を出しました。

この広告は、一見すると子供に向けたものだとは思わないものです。

 

大人がカッコよくタバコを吸っている写真を使っていたとして、子供向けの広告だとは誰もが思わないですよね。

だけど、子供の心理を知り得ているタバコ産業は、これを理解して、広告を出していたんです。

 

そして、タバコはカッコいいと思って吸い始めた少年たちは、やがてニコチンに依存するようになり、タバコに対してカッコいいと思うことが無くなっても、タバコを買い続けることになる。

タバコは所属意識を生む

『タバコは優秀なコミュニケーションツールだ』

僕が社会人になりたての頃は、このようにいう先輩、上司が多かった。

 

以前まではどこでもタバコを吸っていたようですが、今では喫煙所が設置され、さらに都会では路上喫煙で罰金を取られることもあります。

だからこそ、喫煙所にはタバコを吸う”仲間”が集まる。

 

特に会社の喫煙所では、何度も顔を合わせる人がいれば、自然と会話をするようになったりして、それで先輩や上司と仲が良くなる、という経験があります。

 

また、同じ銘柄のタバコを吸っているだけで、会話のきっかけにもなる。

『あ!同じタバコを吸っているんですね!』

といった具合に。

 

この所属意識を生むことも、タバコをやめられない原因の一つであったりします。

タバコを吸う事のメリットと感じるようになり、タバコを止めることで喫煙仲間から外れるようになる。

そうなることで、コミュニケーションを取れなくすると、危惧する人もいます。

歴史は繰り返す

タバコ産業は、タバコに害はないと、近年までずっと否定し続けてきた。

健康に悪いという風潮が出るたびに、健康に悪影響はないと、決してタバコの害について認めませんでした。

 

しかし、近年ではネットの影響か、タバコが健康や、周囲の人に害を与える存在だとして、以前よりもタバコ産業に対する風当たりが強くなってきた。

そこで、最近出てきたアイコスや電子たばこについて、思うことがあります。

 

アイコスや電子たばこは、普通のタバコと比べて、圧倒的に健康に害は少ない、というようなイメージがあります。

しかし、アイコスにはニコチンは相変わらず含まれますし、電子たばこにもニコチンを含むリキッドはありますし、それを手に入れるのは容易です。

 

何となく、アイコスの広告を見ていると、タールが少ないから大丈夫といったニュアンスを感じるのですが、タールが少ないからと言って害が少なくなるわけではないです。

 

そして、アイコスにはタール、ニコチンの量が記載されていませんが、ニコチンについてはそれなりに強いです。(普通のタバコの6~8mm位?)

副流煙のリスクがないともいわれていますが、吐き出した息にニコチンが含まれていることもあるでしょうし、煙が見えない分、普通のタバコより質が悪い、という意見もありますね。

 

つまり、依存性のある部分をしっかり残しつつ、何故か健康的なイメージを与えることに成功しているように思えます。

まとめ

禁煙のために読んだ本書ですが、結構ビジネス的にも勉強になることが多かったです。

リピートの重要性、リサーチの役割とか。

さて、この本が禁煙に役立つか、ですが…

 

他で紹介されている禁煙本が、自分のメンタルと向き合うようなものが多いイメージですが、本書は論理的に自分の喫煙衝動を抑えるのに役立つ、と感じています。

タバコ産業の歴史を振り返りつつ、そのあくどい商法を見て、こういう風に感じさせられていたのか、と思わず納得出来たり。

 

『俺はニコチンの依存に負けないぜ』とか、『こんな奴らに搾取されてたまるか』といった感じで活用できました。

禁煙している人は、一度読んでみてはどうでしょうか?

 

何かしら役に立つと思います。