今回読んだのは、和波俊久『ビジネスモデル症候群』です。
起業を目指している人は、おそらくこのように考えているのではないでしょうか?
「より良い『ビジネスモデル』を構築することができれば、ビジネスは成功する」
このように、様々な書籍で、起業するならビジネスモデルを構築しろと言われます。
しかし、本書では
ビジネスモデルを構築すると起業は失敗する!
と世間の意見とは正反対の主張をしています。
特に、起業をしようと考えている人は、アイディアを重要視しますよね。
でも、自分でいいアイディアを思いつくと、客観的にそのアイディアを分析できなくなります。
ようは自分の考えに熱中しすぎてしまうわけです。
そんな中、本書の内容は、根注する人の頭に冷や水を浴びせて、
『おいおい、ちょっと待てよ。冷静に考えてみようぜ』
と引き留めてくれるような、貴重な本だと感じました。
この書籍を読むべき人
この書籍を読むべき人は、
●起業を目指している人
●起業がなかなか成功しない人
と、起業に興味がある人であれば読むと役に立つ内容でした。
起業する人がおちいりやすい問題点を的確に捉えている内容です。
起業で失敗したくないと思うのであれば、読んでみてください。
書籍の要約
ビジネスモデル症候群とは何か?
ビジネスモデル症候群とは、自分自身のアイディアに固執することにより、冷静な判断力を失ってしまうことをさす。
(ちなみにビジネスモデル症候群は著者の造語)
なぜアイディアに固執してしまうのか?
理由は素晴らしいアイディアを思いついたときには、確証バイアスがかかってしまうからだ。
確証バイアスとは、自分にとって都合のいい部分しか見えなくなり、都合の悪い部分は『ノイズ』と見なす。
アイディアを思いつけないことよりも、自分自身を騙し始めるから、起業は難しいのである。
自分自身をだまし続けるため、本人は何が悪いのか分からず、結果数年を無駄にすることが多々あるのだ。
客観的な視点では明らかに間違っていると分かるものであっても、だ。
なぜビジネスモデル症候群に感染してしまうのか?
ビジネスモデル症候群になってしまう理由は、ビジネスモデルを神格化していることが原因だ。
多くの人はビジネスモデルに関して、典型的な2つの勘違いをしている。
一つは、成功したスタートアップにはビジネスモデルがあると妄信していることだ。
例えば、Googleが創業した当初は、検索エンジンに広告を表示するという設計ではなかった。
(というか、そもそもGoogleの創業者2名は、検索エンジンに広告を表示することを嫌がっていた)
であるにもかかわらず、検索エンジンというサービスを提供すること、広告収入を得ること、これらをまるで最初から設計していたように思っている場合がある。
二つ目は、スタートアップ=イノベーションと考えていることだ。
つまり起業当初から世の中に大きな変化をもたらすような、凄いことをしようと考えている。
しかし、起業の経験がない、サラリーマンの経験しかない人が最初からイノベーションを起こせるわけがない。
イノベーションを起こす起業家である前に、一人前の経営者となる必要がある。
ようは多くの人は『ビジネスモデル』を作ることに躍起になりすぎているのだ。
それよりも先に、まずは経営を成り立たせることから始めるべきだし、ビジネスの基礎的な知識を身につけたり、業界の知識を身につけるべきということ。
そこを分かっていないと、素晴らしいビジネスモデルをいくら考えようとしても、意味がない。
『とりあえず素晴らしいアイディアを出して、良いビジネスモデルを作ろう』
『とりあえず株式会社を作って、、、』
と、このように安易な考えや選択をすることを避けなければいけない。
では、ビジネスモデル症候群から脱却するためには、何をする必要があるのだろうか?
ビジネスモデル症候群の悪影響を予防するために
ビジネスモデル症候群にかかり、その悪影響を受けることは、起業失敗の要因となってしまう。
だからこそ、ビジネスモデル症候群を予防するための対策をとる必要があるのだ。
その対策とは、いったいどんなものがあるのだろうか?
①反証を心がける
何らかのアイディアを思いついたとき、確証バイアスに陥ってしまう。
このようなバイアスは、頭でわかってはいても絶対に回避することは出来ない。このバイアスへの対策が『反証』である。
反証とは、それ以外の可能性があるのではないかと疑うことだ。
なぜ反証が必要になるかというと、人は『確証』を無意識に求めるからである。
反証を意識的・無意識的に避けてしまうことで、自分のアイディアが絶対的に正しいと妄信してしまうのだ。
②問題を正しく理解する
人は普段の生活で、ほとんどの判断を直感によっておこなっている。
さまざま問題を無意識に簡素化しているのだ。
例えば、何か鋭いものを足で踏んでしまって『痛い!』と感じる時、足をその場からどかさなければならないと直感で判断するように。
問題を正しく理解する前に答えを出そうとしてはいけない。
とにかく重要なのは、自分にはまだ分からないことがあると思い続け、学び、成長しなくてはいけないということだ。
③メンターを手に入れる
どれだけ注意していても、自分の事を客観視することは難しい。
だからこそ、良いメンター(師匠)を持つことは、ビジネスモデル症候群を予防する解決策になりえる。
より良いメンターは、具体的なアドバイスを促す人よりも、考えることを促す人を選ぶべきだ。
また、メンターはお客様の中にも存在する。そうは何かの悩みを抱えている人たちの事だ。
そういった人たちのほうが、問題の本質を理解している場合が多い。
現場に出て、生の声を聴くことで、客観的な意見を得ることが出来る。
これもバイアスを取り除く一つの手段である。
④問題を可視化する
Facebookの社内の壁には、『終わらせることは、完璧よりも優先される』という言葉が掲げられている。
このような形で、いつも重要なことが目に入り、思い出せるようにしておかなければならない。
可視化することによって『没頭』することを予防することが出来るのだ。
問題の構造を可視化し、理解する。理解すればするほど、ビジネスの成功に近づく。
フレームワークを用いるなどして、自身の問題の可視化に努める必要があるのだ。
起業とは経営である
起業は、ビジネスのアイディアを実現すること。
そう思っているかもしれないが、実際には『経営』が最も重要になってくる。
どんなビジネスをしていても経営が成り立たなければ、成功することはないからだ。
優れたビジネスを生み出すための装置として経営があり、まず最初にこの装置を構築しなければならない。
ビジネスモデルの実現より、経営を優先しなければいけないのだ。
やりたいこと・できること・求められること理論
起業を目指す人の中には、『やりたいこと』が頭の中にある場合がある。
しかし、それは市場からは求められていないことである場合も多い。
また、やりたくても、それを実現できない場合もある。
このように、『やりたいこと』『できること』『求められること』の不一致が、ビジネスの失敗の原因になる。
成功するビジネスとは、これら3つの要素が完全に一致しているものである。
起業をするのなら、『やりたいこと』の幅を広げ、『できること』を増やし、『求められていること』を学習する必要があるのだ。
読後感想
さて、書籍を読んでいて、ビジネスモデルが起業を失敗に導くというアイディアが面白いと感じました。
この書籍でいうビジネスモデルとは、いわゆる「社会にイノベーションを起こすような起業」でしょうね。
つまり、起業するというのは何かデカいことをしないといけない、と考えていることです。
なぜか、起業に関して特別感を持っている人は結構多い印象を受けます。
世の中の有名な起業家をみていると(ホリエモンとか)、
起業家=社会にインパクトを与えるモノ
という印象が強くなるからだと思いますが。
でも、実際はあんなにデカいインパクトを与えなくても十分食っていけます。
そもそも、いきなりデカいことをやろうするのはおかしい。
著者も言っていますが、まずは経営を優先すべきだと。
ようは世間一般のイメージのような起業家(イノベーター)になりたければ、まずは食っていけるレベルの経営者になれ、ということです。
何にしてもそうなんですが、0→1の段階の壁が一番難しくて、挫折しやすい段階です。
で、アイディアに固執することは、0→1の壁の事を無視して、いきなり0→100に行こうとしているようなもの。
その実力がないのに出来るわけがないということです。
特に自分のアイディアに熱中している間は、なぜかそれが出来るように感じてしまいます。
確証バイアスにかかり、現状維持バイアスにかかったら、平気で3~4年とか過ぎてしまうこともありえる。
さすがに数年単位の寄り道は避けたいところです。
成功している企業を見ていると、いきなり優れたビジネスをしているように感じます。
でも、あのGoogleでさえ、最初はどう収益化すればいいのか、創業者たちは悩んでいました。
(というか創業者の2人は、当初は優れた検索エンジンを作るのに躍起になって、収益のことは考えていなかった)
どんな分野であっても、階段を一段一段上るように積み重ねていかないと、いつか転げ落ちてしまうということです。
起業を考えるのなら、ビジネスモデルを考えることだけではいけない。
自分のビジネスの能力を伸ばすために、日々勉強や実践を積み重ねていくことが何よりも重要だということですね。
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